看護師のミスは命にかかわる
看護師の悩みのひとつに雇用体制や病院内での人間関係の他に、医療事故を起こさないか不安ということもあるようです。ちょっとした小さなミスや勘違いだけで患者さんのその後の人生を左右しかねませんし、場合によっては命を奪ってしまうこともないとは言い切れません。
新人だけではなく、ベテランでもそういった不安は常に持っているようです。
実際にあった看護師のミスによる医療事故のケース
《事例1》医師が指示したモルヒネ80㎎を、婦長が「80アンプル(1アンプル=10mg)」と記入。それを見たナースが800㎎投与し、投与後2日足らずで患者が死亡。
《事例2》輸血の直前に患者のベッドが変わったのに気がつかず、別の患者に準備されていたA型の血液をB型の患者に投与、患者は16日後死亡。
《事例3》内服液を誤って点滴してしまい、1歳6ヶ月の女児が心不全で死亡
《事例4》手術中、医師から局所麻酔注射を求められたところ、勘違いで手元にあった止血用薬剤を手渡し患者は一時意識不明に。
こういった事例からもわかるように、看護師のミスのほとんどが投与薬の取り違えによるものみたいです。これはすべて看護師個人が悪わけではなく、医師との連携、看護師同士の連携がうまくいっていない病院側の落ち度と言えるでしょう。事例2も、ベッドが変わった事を明確に伝えていれば発生しない事故ですし、事例3、4でも医師の明確な指示があればおそらく起こらなかった事故です。
【投与薬を取り違えそうになった看護師は半数以上にのぼる】
アンケートで「患者さんに投与する薬を取り違えたことがある」という人は15.5%いました。「取り違えそうになった」という人は68.1%にものぼります。
医療事故につながるか重大なミスになるかどうかは別として、看護師の6人に1人は薬を取り違え、7割近くの人がその危険性を秘めていることがわかっています。
しかも、医師の指示に関しては、指示書が不明確という人が2.6%、ときどき不明確という人が91.4%という現状で、看護師が気をつけていても、医師との意思疎通いかんによっては医療事故が起こりうる現状なのです。
【ミスを未然に防ぐには】
工場などとは異なり、病院でのミスは患者の命にかかわることなので、早急に対策を練らなければいけません。「今度から気をつけます」というわけにはいかないのです。もちろん、これは看護師個人だけが抱える問題ではないのですが、個人でもできることはあります。
解決策
・投薬、医療に関する知識を高める
医師も処方を書き間違えるということはあります。この時に高い知識があれば、「間違いなのでは?」と投与する前に気づけるでしょう。
・迷惑がられても口に出して確認
医師の指示に従っただけ、といっても口に出して「○○薬、○㎎ですね?」とか「○○注射ですね」と確認しましょう。自分がわからないことでも、口に出せば医師や同僚が間違いに気づいてくれる可能性があります。
・疲れていると感じたら、休息を取る
3Kとよばれる仕事の看護師。夜勤や残業で身体がヘトヘトということも少なくありません。そうなると集中力も低下し、ミスを起こしやすくいなります。無理してがんばることは決して美学ではありません。万全の態勢で看護業務を行うことが大切ですから、疲れを感じたら無理をせずに休息を取りましょう。
・病院・診療科を変える
十分に注意していてもミスを犯してしまう人はいます。自分でそれがわかっているのであれば、命にかかわるミスが少ない病院や診療科に転職したほうがいいでしょう。これは自分自身のためだけでなく、患者さんのためでもあります。
・病院以外の職場に転職
本当に重大なミスを避けたいのであれば、患者に関わることのない職場に転職することもひとつの方法です。主な就職先としては、保健所や保健センター、企業や学校の保健室というものがあり、リスクは極めて少ないです。